以前、このブログで、フランとポンドの交換率について話題になったのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
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参考ページ1→
参考ページ2→
参考ページ3これがですね、根本的なところから違っていたことがわかったんです!
今日
旨樫さんから情報をいただきました。
私が、この問題に関してはすっかり投げやりだった一方で、コツコツ調べてくださってたんですね。
ありがとうございます~~!!
なんと、仏語本では「ポンド」という単位は使われていないんです!!
たぶん、ダル物でポンドという単位が出てくるのは、5巻6章あたりと6巻33、34章あたりくらいだと思うんですが、まず5巻6章。
ダルタニャンがアンヌ王妃からもらったダイヤを売ったお金についてです。
「あり金全部出してくれ、百ポンドになればいいが、ぼくのは、ほら、このとおり……」
こう言ってダルタニャンはからっぽのポケットを裏返して見せた。(5-6)
- Videz vos poches, dit-il, jusqu'a concurrence de cent livres sterling, car, quant aux miennes...
Et d'Artagnan retourna ses poches absolument vides.
「~livres sterling」というのは、英ポンドのという意味みたいです。
ここで唯一sterlingがくっついてるんで、百ポンドという訳は正しいのですが、その後はついてません。
「で、いくらかかった、え、きみ?」アトスが聞いた。
「だって、知ってのとおり、ぼくたちはもはや住むに家なき貧乏銃士じゃないんだ。費用は頭割りにするべきだよ」
「一万二千ポンド」ダルタニャンが答えた。
「どこで見つけた、そんな大金を?持っていたのかい?」アトスがたずねた。
「太后の名高いダイヤモンドだよ!」ダルタニャンはためいきをついた。(5-6)
- Et combien cela vous a-t-il coute, ami ? dit Athos ; car, vous le comprenez, maintenant que nous ne sommes plus tout a fait de pauvres mousquetaires sans feu ni lieu, toutes depenses doivent etre communes.
- Cela m'a coute douze mille livres, dit d'Artagnan.
- Et ou les avez-vous trouvees ? demanda Athos ; possediez-vous donc cette somme ?
- Et le fameux diamant de la reine ! dit d'Artagnan avec un soupir.
おそらく、最初の「~livres sterling」の流れで、ポンドと訳したんでしょうね。
そして6巻33章。
「ああ!なんたることか!」チャールズ二世は叫んだ。
「わたしを王座に戻してくれた剣が、この王国から出て行くのか、わたしの王冠を、一日でも飾ってはくれないのか?いや、断じていかん!そうはさせませんぞ!ダルタニャン殿、二十万ポンド差し上げるから、その剣をわたしに譲ってくれませんか。(略)」
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「(略)それゆえ、わたくしは剣の代価として三十万ポンド要求しますが、さもなければ、いっそのこと無料で陛下に献上いたします」
そう言いながら、ダルタニャンは剣の切尖を持って国王の目のまえに差し出した。
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そう言って、若い国王はテーブルのまえに行き、ペンをとりあげ、財務官に宛てて三十万ポンドの手形を書いた。(6-33)
- Oh ! oh ! s’ecria Charles II : quoi ! une epee qui m’a rendu mon trone sortirait de mon royaume et ne figurerait pas un jour parmi les joyaux de ma couronne ? Non, sur mon ame ! cela ne sera pas ! Capitaine d’Artagnan, je donne deux cent mille livres de cette epee.(略)
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- (略)Je demande donc <b>trois cent mille livres</b> de l’epee, ou je la donne pour rien a Votre Majeste.
Et, la prenant par la pointe, il la presenta au roi.
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Et, allant a une table, il prit une plume et ecrivit un bon de trois cent mille livres sur son tresorier.
こちらでは「~livres sterling」という単位は全く使われていません。
おそらく訳者が、イギリスでの会話だからとポンドに置き換えてしまったのかもしれません。
邦訳の6巻34章でもポンドという単位が何度か出てきますが、仏語版の方ではすべてlivresになってます。
要は、邦訳ダル物の1ポンドはそのまま1リーヴル(1フラン)と考えていいと思います。
とにかくこれはブルッセルの章に次ぐ大発見と言ってもよいでしょう。
旨樫さん、グッジョブです!